暗闇の中で・・・part4
オーストラリアでリバーガイドをしていた時の回想記です♪(⇒過去記事はこちらです)
前回の続きです。
ここまでの流れです(今回から、いきなり読むと分からないと思うので、よかったらどうぞ♪)
⇒暗闇に中で・・・
⇒暗闇の中で・・・part2
⇒暗闇に中で・・・part3
私は決めました。
「カヤック捜索大作戦」を決行するしかないと!
時刻はすでに夜の21時をまわっています。当たりは当然のように真っ暗です。
↓こんな山の中なので当たり前ですね
(実際のバロン川です。私がいた場所は写真の山の斜面の緑が生い茂っているようなところです)
私は、もう一度熱帯雨林のジャングル、「何も見えない闇の中」へと突入していったのです。
今思えば、車の中にでも懐中電灯でも積んでおけばよかったのですが、そんな気の効いたものはありませんでした。
何も見えないので、手当たり次第探すしかありません。
とはいってもある程度の予測を立てなければいけません。 なにせ本当に何も見えないので、少しずつしか移動できませんから・・・。
私はカヤックを置いたはずの場所からとりあえず真っ直ぐ下に斜面を降りていくことにしました。
普通に考えれば、「その辺り」にカヤックがずり落ちていると考えられたので。
ゆっくり、ゆっくりと足を伸ばし、手を伸ばし、降りていきます。
自分の手もおぼろげにしか見えないほどの闇です。
場合によっては、自分の手さえ完全に見失ってしまう時もありました。
たぶん、頭上の熱帯雨林の木々が作っている「葉っぱのカーテン」の茂り具合のせいだと思われます。
微妙にでも月明かりが入ってくるところではほんの少し見えたのでしょう。
逆に完璧に光を遮断している場所では、全く何も見えないのです。
注意深く、真っ直ぐに、それでもって左右に手を足を伸ばしながら降りていったのですが・・・。
しかし、見つかりませんでした・・・。
私は熱帯雨林の場所を抜けて川岸まで着いてしまったのです。
一瞬「もしかしたら川に落ちた???」とも考えましたが、その斜面は急になっているとはいえ、途中に木がたくさん生えていますし、大きな岩もゴロゴロしている斜面です。
それらを全て抜けてカヤックが川まで来てしまうことは考えられませんでした。
もう一度、若干位置をずらして道路まで上がってみましたが、やはり見つかりません。
この一往復だけでも20分ほどかかりました・・・。
そこで私は再び考えます。
「やっぱりそんなに下まで落ちることはないな・・・」
「じゃあ、斜面の中腹よりも上のあたりのどこかにあるはず・・・」
「ローラー作戦でいくか・・・」
私はそう考え、斜面の上から今度は平行に横に15メートルほど移動し、ちょっと下に降りて、再び横移動しながら探すという作戦に変更しました。
すごく地味~な作戦でしたね・・・。
暗闇で探している間には、ジャングルのあちこちから色々な音が聞こえてきます。
「ガサガサ・・・」 (何かの小動物か・・・)
「ズズズ・・・・ズズズz・・・」 (蛇か・・・嫌だな)
「ズザザザザー!!」 (オワ!何だ!びっくりした)
熱帯雨林の中にはホントに色んな生き物がいるということを実感しました。
彼らは夜になったので活動も活発になってきたのでしょう。
ちなみにケアンズ周辺には毒蛇もたくさん生息しているのです。 しかも世界屈指の猛毒です・・・
私は、こんなジャングルの中で一人で毒蛇には噛まれたくなかったので、なるべく音を立てて移動するようにしていました。
そんな感じでかれこれ一時間近くは探しました。
しかし、一向に見つからないのです・・・
私は、もういい加減、お腹減ってきたし、真っ暗闇のジャングルの中では、あちこちから「色々な音」が聞こえてくるしで、さすがに少し疲れてきてしまいました。
時刻は既に22時半くらいだったでしょう。
私は再び道路まで上がり一息入れることにしました。
「いい加減、疲れたな・・・」
「ほんとだったら今頃とっくに夜ご飯食べて、TVで見ながらのんびりしているはずだったのに・・・」
「こんな時間にこんな山奥のジャングルで一人でカヤックを探しているなんて・・」
私はついにその日のうちに見つけることを諦めようかなと考え始めました。
「もうここまで探してないのだから仕方ないか」
「明日、タリー川から帰ってきてからもう一度来ようかな」
「でも、それではまた夜だな」
「かといって明日の朝に来るとしたら5時に来たとしても、探せる時間はせいぜい30分だけ・・・しかもまだ暗いし・・・」
「明日、誰か休みの人に頼むか・・・」
「あ、俺が休んで誰か代わりに働いてもらえばいいのか」
などと、しばらくボーっとジャングルの暗闇を見つめながら、そんなことを考えていたのです。
すると、その暗闇の中で、なんか変な違和感を感じたのです。
これは文章では説明できないのですが、「ただなんとなく・・・気になる・・・」といった感覚です。
真っ黒な闇なので、もちろん何も見えないのですが、なんとなくそこが・・・。
「ん・・・。 あそこ、なんか変だな」
「まさか、カヤック??」
「でもあそこは最初に散々探した場所だし・・・」
私は気になったので、そこに移動して斜面を少し降り、手を伸ばしてみました。
大きな岩の感触がありました。
「何だ・・・ただの岩だ。カヤックじゃない・・・」
と思って手を引っ込めたときに、かすかに手の甲の部分に、記憶にある感触が触れたのです!
プラスチックのちょっとザラッとした感触です。
「あれ???今の感触は!」
と思って再度、手をすこしだけずらして伸ばしてみると・・・・
ありました!! カヤックがそこにあったのです!!
私は思わず暗闇の中で叫んでしまいました(笑)
「あったー!!よかったー!!」
もちろん、パドルも一緒にありました♪
しかし、ある疑問が・・・。
その状態から考えると、カヤックとパドルは、別に滑り落ちたわけではなくて、ずっとそこにあったようです・・・。
しかも、その場所はさっきも書きましたが、最初に私が「カヤックとパドルを置いたはずの場所」にちゃんとあったのです。
つまり、私が最初に探しに行った場所ですね。
私「何でだ???おかしい???」
「絶対に最初はなかったはずなのに・・・・」
今となっても、なぜこんなことが起こったのかはわかりません。
単に、視界が全くなかったために、ほんのわずかな違いで手や足に触れなかっただけなのでしょうが・・・。
あんなに念入りに探したのに・・・
でも、最後になんとなく「そこになにかあるような気配」を感じ、実際にカヤックを見つけることができたのも、あとから考えるとちょっと不思議でした。
やはり、「物には魂が宿る」というのは本当だったのでしょうか??
結局、この日自宅に着いたのは夜の23時過ぎ。
それ以来、私は常に車に懐中電灯を常備しておくようになったのです(笑)
「何かを見失ったら、とりあえず、”最初の場所”に戻ってみる」
色んな意味で大切なことかもしれません♪
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