暗闇に中で・・・part3
オーストラリアでリバーガイドをしていた時の回想記です♪(⇒過去記事はこちらです)
前回の続きです。ここまでの流れはこうなってます。
暗闇の中、なんとか道路までカヤックを持って上がってきた私は、
「フー、なんとか上がってこれた・・・」
「しかし。夜の熱帯雨林の中が、こんなに暗いとは知らなかったな・・・」
「通り道を知っていたから良かったものの、知らなかったらもっと大変だったな」
「よし、とりあえず、車まで走ろう」
「その前に、このカヤックとパドルをどこかに隠しておこう」
さすがにカヤックを担いで車まで走っていく事は出来ないので、いつも道路脇の草むらのところにカヤックとパドルを軽く隠していたのです。
そして身軽な状態で車まで走って行き、あとからカヤックとパドルを回収するという作戦でした。
なぜ、「隠す」のかというと、たまにカヤックを見える所に置きっぱなしにしておいて、わずかな間に盗難に遭うということがあったからです。
私はそれまでにそういった経験はありませんでしたが、そのバロン川で、私の知り合いにカヤックを盗まれたという人が何人かいましたし、その日の少し前にも置きっぱなしにしておいた装備を盗まれたという人がいたのです。
カヤックというのは結構高いのです・・・。
私が使っていたカヤックは普通のものでしたが、それでも約19万円。パドルだけでも6万円程。その他にも細々とした装備を合わせると、その総費用はバカにはならないのです。
なにより大切な愛艇とマイパドルですからね♪
もう20時半近い夜だったので、それほど心配する必要もなかったのですが、それでも万が一のことを考えて、私はカヤックとパドルを隠したのでした。
しかも、ちょうどカヤックを新しく買い換えて新艇にしたばかりだったので、念入りに草むらではなく、道路から川に続く急斜面に少し降りたところに隠したのでした。
「ここまで、完璧に隠せば見つかる心配は無いだろう♪」
私はそう安心して、暗い夜道を月明かりの下、車まで走っていくことにしたのでした。
山の中には、街灯なんかもちろんないので、道は暗いのですが、月明かりがあるので安心です(笑)
バロン渓谷には、ホタルもたくさん生息していたので、ラッキーな日には、無数のホタルが光っていたものです。
その中を一人でランニングするのは、なかなか気持ちのいいものでした♪
そして、無事に川の上流に停めてあった車まで戻り、着替えて、早速道路を運転してカヤックを隠しておいた地点まで戻って来ました。
車から降りて、カヤックを隠しておいた斜面をみると、そこはやはり真っ暗です。
月明かりに目が慣れてしまっていた私は、再び「熱帯雨林の漆黒の闇」というものと対面したのでした。
しかし、今回は斜面の1~2メートルほどしたの所にカヤックを置いただけだったので、そんなに心配する必要もありません。
少しだけ降りればカヤックはそこにあるはずなので、ただそれを車に積んで、自宅に帰るだけなのです。
時間は既に夜の21時ほどでした。
「さ、早くカヤックを回収して家に帰ろう。お腹も減っているし♪」
私は少しだけ目が慣れるのを待って、それからゆっくりと斜面を降りていきました。
やはり熱帯雨林のジャングルの中は、いくら目が慣れようともほとんど見えません。自分の足元を見ても足さえ見えずに、ただの「真っ黒」です。
「ここだな」
私は闇のなかで手を動かしてカヤックを掴もうとしました。
しかし、微妙に位置がずれているのか、カヤックらしきものは手に当たりません。
「ん? もうちょっとこっちかな?」
「あれ?ないな」
「もう少しこっちかな」
「あれ???ここにもない」
「もうすこし横だったかな~」
私は斜面にそって左右に3メートルほど移動しながら手でまさぐりました。
「・・・・・・・・」
「無い・・・・・・」
「おかしいな。絶対にここにあるはずなのに!」
私は一度道路まで上がることにしました。もう一度カヤックの場所を確認しようとしたのです。
もしかしたら最初の段階で間違っていたのかもしれません。
しかし、場所は合っています。 何度もその場所を利用していた私が間違えるはずはありません。
私の頭にある考えが浮かびました。
「もしかして誰かに盗まれた?」
しかし、冷静になってみるとその可能性はほとんどありませんでした。
こんな時間に、こんな山の中で、何も見えない真っ暗闇の中に隠してあったカヤックを、誰かが見つけて持ち出すなんてことはまずありえないからです。
それに真っ暗の山の中なので、誰かが車でその道路を登ってきたら、車のライトで絶対にその存在に気付く事ができたはずなのに、私は何もそれらしきものは見ていなかったのです。
私はもう一度、「カヤックを置いたはずの場所」を探すことにしました。
しかし・・・・、ないのです・・・。
もう考えられる可能性は、たった一つです。
カヤックをが置いてあった斜面から、なんらかの理由でもっと下に滑り落ちてしまった・・。
それしかありませんでした。
「マジか・・・。 この中で探すことなんてできるのか???」
なにせ、しつこいようですが「漆黒の闇」です(笑)
通常の森でしたら、全く躊躇することなく斜面を降りていったでしょうが、一度経験しているだけに、すこし迷いました。
「明日、明るくなってから取りに来ようかな」
「あ、でも明日はタリー川の仕事だから朝はダメだ」
翌朝は朝6時に出社だったため、その前にバロン川に戻ってきて探すことは不可能だったのです。
かといって、そのあとの日になってしまったら、それこそ誰かに発見されて持ち帰られてしまうかもしれません。
なにより、自分の愛艇であるカヤックをそこに残しておくことはでいませんでした。
もう決心するしかありません!
今、探すのです!
時刻は既に夜の21時。
場所はオーストラリアのケアンズ、バロン渓谷の熱帯雨林のジャングル。
私の『カヤック捜索大作戦』が決行されたのです!
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