水難救助の技術と知識!

2019年7月30日

回想記を書こうと思ってましたが、九州の大雨によるTVニュースを見て思ったことがあるので、それを書くことにします。

先ほどテレビのニュース番組で、濁流に飲み込まれた軽トラックの荷台に乗っていた男性の救助活動の様子が放送されていました。

男性は田んぼの様子を見に来て、増水した流れに飲み込まれてしまったようです。

現場の状況は、男性の軽トラックは電信柱に引っかかっている形で、男性は軽トラックの荷台に立ち、その電信柱に捕まっている状態でした。

濁流はちょうど軽トラックの荷台の高さほどまで来ていました。

岸から軽トラックまでは見たところ約30メートルほどでしょうか。

この状況で地元の消防士の方たちが救助にあたっていたのです。

結果は無事に男性を救助できたのですが、その過程は私の目から見ると決して安全なものではありませんでした。

消防士の人たちにとっても、救助された男性にとってもです。

厳しい言い方になってしまいますが、消防の方々はもっと水難救助の訓練を頻繁に受けるべきだと思っています。

もちろん、消防士の方々が普段、自らの命をかけて私達の安全を守り、そして救助にあたってくださっていることは十分に承知していますし、そのことに対し深く感謝しています。

私自身の友人にも消防士や、さらにその中のハイパーレスキュー隊として働いている人達が数人います。私は彼らを、とても尊敬しています。

しかし、消防士の方々が最初に「水難救助」を要請される「専門家」として、一般的に社会で認知され、実際に救助を行う立場にいる以上、「不十分な知識や技術」では、

助けられる命も助けられないし、自分自身の身を危険な目に合わせてしまうのです。

ニュースでは、消防士の方たちが、軽トラックの荷台の上で、立った状態で電信柱につかまっていた男性に対し、

「しゃがんでください!」と叫び、男性はその指示どうりにしゃがみました。

消防士の方々は「より安定した体勢」を指示したつもりなのでしょうが・・。

しかし、この指示は、この状況下では明らかに不適切なものでした。

なぜかというと、濁流の高さはちょうど軽トラックの荷台を少し超えている状態だったのです。

つまり立った状態ならば濁流の流れがぶつかる部分は「足首くらいまで」だったわけです。

足首くらいの高さまでであるなら、かなり強い流れであっても、流されずに耐えることは十分に可能です。

しかも電信柱につかまっているわけですからなおさらです。

つまり、男性が自らとっていた「立ちながら電信柱につかまる」という行為は、「流されないための最善策の一つ」だったわけです。

しかし、しゃがんでしまうと、下肢や臀部など、流れに当たってしまう部分が多くなり、男性はより強い水圧を受けてしまうわけです。

しかも、男性はしゃがむことにより電信柱も離してしまっていました。

男性はなんとかこの体勢でも耐えていましたが、これでは濁流の水位がちょっと上がっただけで、体に受ける水圧が倍増してしまうので、簡単に流されやすくなってしまうのです。

この程度の「川の知識」は実際に流れのなかで、ちょっと訓練を受けただけで比較的簡単に得られるものです。

ニュースでは、途中で男性にロープを渡したり、4時間後にモーター付きのボートが到着し、なんとか男性を救助できた様子も映っていましたが、この作業も私の目には、

「危ないな~」と感じてしまう事が多かったのです。

あくまでも、推測になってしまいますが、もしあの場にラフティングボートなどの装備があり、

「ラフティング競技をある程度こなせる技術と体力」も持ち、さらに「リバーガイドの知識と技術」を持っている者が4~6名いたならば、

男性の救助にはものの10分もかからないだろうと思います。しかも比較的安全にです(もちろん体を張った救助活動に絶対安全はありえません)

これはあくまでも、TV画面からの「濁流の流れの速さと構造」から判断した結果ですが、あながち的外れな意見ではないと思っています。

10分と4時間。そしてその安全性。両者の差はとても大きいものです。

あの場にいた消防の方々を責めているわけではありません。適切な訓練を受けていないのですから当然です。

あの状況で自分たちの知識を総動員し必死に救助活動をしていたのは、画面越しに見ていても感じられました。

消防士の方々は日頃から厳しい訓練をしています。その潜在能力はとても高いものであることは間違いありません。

適切な訓練を受けることができ、日頃の訓練にそれを少しでも取り入れることができるのなら、その「水難救助能力」は飛躍的に向上するのではないでしょうか。

(地域によっては、積極的に水難救助の訓練を取り入れている部署もあるようです♪しかし、全国的に見るとやはりまだまだ・・・でしょう)

「リバーガイド」と「ラフティング競技」の世界に生きるものとして、将来、何か自分にできるものがあるのではないか・・・・。

ニュースを見ながらそんな事を考えてしまいました。

男性が無事に救助されてなによりです♪

救助にあたった消防のみなさん。お疲れ様でした!
ありがとうございます!!

ちなみに↓の写真は、オーストラリアのペンリスにて、友人がインストラクターをしていた水難救助の講習の一コマです。
これについては次回の記事で書きます→こちらです