カヤックでの失敗・・・part3

2019年8月1日

オーストラリア、ケアンズでの昔の出来事を思い出しながら書いてます。

カヤックでの失敗・・第三弾。 こちらからの続きです

⇒変貌するバロン川!
⇒カヤックでの失敗・・。
⇒カヤックでの失敗・・part2

巨大なホールに突っ込んだ次に瞬間、耳元でなにやら
「ズボッ!」という音がしました。

いや、正確に言えば、激流の中で、しかもバックウォッシュの水中のなかでそんな音が聞こえるはずはありません。

「ズボッ」という何かが抜けたような感覚です。

次の瞬間。耳の奥に何か冷たいものが、すごい勢いで入ってきたのが分かりました。

そうです・・・。

なんと水圧で耳の鼓膜が破れてしまったのです!

そして、私の最後の突撃も全く効果なく水中でグルグルもみちゃに回され始めたのです。

まるで、巨大な洗濯機の中に放り込まれたような感じでしょうか?

それも普通の洗濯機でなくて、ドラム式ですね・・

通常、このような時は上半身をカヤックに覆いかぶさるように、なるべくピッタリと付けます。
そうすることで、身を守るのと同時に、ロールアップの体勢を整えるのです。

ロールアップとはひっくり返ってしまったカヤックを元の状態に戻す技術です。

しかし、このときは水圧というかバックウォッシュの力が強すぎて、私はこの体勢を取ることが全くできませんでした・・・。

カヤックはあっちの方向。パドルはこっちの方向。上半身はそっちの方向。といった具合にあらゆるものが違う方向に引っ張られてしまい、もうモミクチャにされてしまったのです!

それはもう凄まじい暴力的な力です・・・
水の圧倒的な力の前に、私の日頃鍛えてきた筋肉も全く為す術もなく
グチャグチャ、モミクチャにされてしまいました・・・

それでも、なんとか耐えていましたが・・。さらに悪いことが起きました。

スプレーデッキがバックウォッシュの水圧で外れてしまったのです・・・

スプレーデッキとは私自身の体とカヤック本体をつないでいるもので、これをしていることにより、カヤックの内部への水の浸入を防いでいるわけです。

↓こんなものです

これをスカートのようにはいて、このように、カヤックに乗り込むのです。
$ラフティング道

スプレーデッキは強力なゴムバンドのようなものでカヤックにハマっているので、普通だったら外れることはありません。

しかし、パワーの強いホール、波などに当たるときには、その衝撃、水圧で外れてしまう事もあるのです。

そうならないように、そのような水のパワーの強い場所に突っ込むときには、上半身をカヤックにかぶせ、自らの体を蓋のようにするのが鉄則なのです。が・・。

その時の私は、突っ込んだ瞬間こそ、その体勢をとってましたが、その後はそれをすることが全くできない状態で、もうモミクチャにされていたのでした(笑)

激流の中で、スプレーデッキが外れる。これはもう致命的です・・

しかも、一人・・。

あっという間に、私の体はカヤックから引きずり出されてしまい、そのまま巨大なホールのバックウォッシュ(逆流)に捕まってしまいました。

このようなバックウォッシュを伴うホールのことを「キーパーホール」と言い、一度ハマってしまうとなかなか出られないのです。

さらに、鼓膜が破れてしまった私は平行感覚を失い、水中でどっちが上か下なのかもわかりません。

鼓膜が破れ、その内側の三半規管が冷たい水が触れると、一時的に平行感覚を失ってしまうのです。
(鼓膜の内側の水が体温で温められ、体温と同じ程度になると、元に戻ります)

まあ、このようなホールでメチャメチャになっているときは、普通の状態でもどっちが上で、どっちが下なのかはわかりませんが・・・笑。

途中までパドルを持っていましたが、もうそれどころではなくなり、パドルも捨て、必死にもがきました!

なんせ息ができませんから・・・。

どっちが水面かはわかりませんがもがくしかないのです。

バックウォッッシュ(逆流)の中で必死にもがき続け、もう息が限界・・・。

という頃にちょっとだけ水面に出てこれて、ここでやっと一息。そして、またバックウォッシュの中に戻させモミクチャにされる・・・。

こんな事を何回繰り返したのでしょうか?

あとになって冷静に振り返ってみると、たぶん水中でもがいていたのは10秒くらい。
一呼吸してまた10秒くらいもがく・・・というのを6~7回くらい繰り返しただけです。

しかし、水中で必死にもがいている10秒というのは本当に長いのです!

息も1呼吸程度しかできなく、また水中に引き戻されますから、もう回数が重なるほど、どんどん苦しくなってくるのです。

しかも、その一呼吸もおもいっきり吸えるわけではないのです。

このような激しいバックウォッシュの中には大量の空気が含まれているため、浮力がなくなり、ライフジャケットを着ていてもあまり浮かないのです。
(⇒こちらの記事を参考♪)

まるで、酸素のなくなった水槽で魚が口をパクパクしているような状態なのです。

上から見たら、激流のなかで私の口と鼻だけが見えたことでしょう・・・

まぬけな姿ですが、本人はもう笑い事ではなかったです(笑)

まさに絶体絶命・・・・。

というわけで、また続きます。
(予想外に長いシリーズになってきてしまってます。すみません)
<→続きはこちらです>